虫の声

セミの声が聞こえなくなった。最後には、ツクツクホウシが鳴いていたが、それも聞かれなくなった。昼は静かになった、日暮れが過ぎると、コオロギが鳴きだした。小学校でも歌ったことがある「虫の声」の歌詞には、マツムシ、スズムシ、コオロギ、クツワムシ、ウマオイなどの鳴き声が登場する。虫の名前なら知っていると思っているが、平安時代の昔には、虫の名前が違っていたという。

マツムシは、チンチロリン、という声だと思っているが、その当時には、松林に吹き抜ける風が、リーンリーンと言う風を表す音をさしていた。今でいうスズムシの音なのだ。それがマツムシと言われていた。

では、スズムシの鳴き声は、金属の鈴の音からきている。当時の鈴は、私たちが知っている大きな音ではなく、とても小さな澄んだ”チンチロリン”という音に聞こえる。

昔はマツムシの鳴き声がスズムシの音、スズムシの鳴き声がマツムシの声だった。なぜ、そんなことになったのかは、調べるとなるほどと納得するだろう。

スズムシは、ちょっと郊外へ行くと、聞こえてくるが、マツムシは、生息場所が河川敷などのちょっと乾いたところ、その場所が減ってきたのだろう。聞くことが難しくなった。

ぜひ、秋の夜長、マツムシとスズムシの鳴き声を聞きに散歩がおすすめ。もし、その声を聞き分けることができるなら、まだ繊細な耳を持っていると言って間違いない。

ネットで調べたら、簡単に虫の声が見つかる。知ってから散歩するか、聞いてからネットで聞いてみるか、どちらでもいいが、風を感じながら、耳を澄ませて発見してほしい。夜空の星が少ないと感じるかもしれないが、自然の音にも耳を傾けてほしい。

マツムシの声は、「虫の声」の歌詞のように、ゆっくりした声ではなく、2倍速くした感じなので、これがマツムシを見分けるヒントになる。

町は、人工の音にあふれている。繊細な鳴き声に気づくことができるだろうか。

kurubi 似顔絵
昆虫科学教育館 館長
久留飛 克明

大阪府保健所で環境衛生を担当し、ハチやダニなど害虫対策の指導や同定を行ってきた。2001年から2017年まで大阪府営箕面公園昆虫館館長を務め、虫嫌いになるのはなぜなのか、自然に対する気づきの大切さをテレビ・ラジオなど積極的に発信してきた。今は博物館などや地域の子供たちに、昆虫を通して、考えるきっかけ作りに取り組んでいる。

著書『家の中のすごい生きもの図鑑』では、私たちの身近に暮らす小さな生きものたちの世界をわかりやすく紹介。本コラムでは、日常のすぐそばにいる生きものたちの不思議や魅力を、楽しく分かりやすく解説いただく。

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