キリギリスは、鳴く。冬を前にして死んでいく生き方。雑草が茂った日の当たる斜面に行くと、あちこちから声が聞こえてくる。メスを呼んでいるのだ。この場所では、最強のバッタと言ってもいい。かむ力は強く、他の虫たちも食べる。しかし、捕まえようと近づくと、さっと地面に降りて、隠れてしまう。彼らの色合いは、緑と茶色をしているから、動かなければ見つけにくい。そんな場所にも敵はいる。トカゲや鳥たちから、隠れなければと思っているのだ。プラスチックがまだ一般的に使われていなかった時代、竹で作ってある虫かごに入れて、鳴き声を聞いて楽しむことが当たり前の夏の遊びだったことを思い出す。
当時は山に行って蝉取りをすることが多かった。今では、都会にクマゼミが増えたとSNSでにぎわったりするが、情報を発信することになるとは、考えもしなかった。そして、キリギリスは、夏休みの標本にはならないことを知っていた。腹の中の内臓を取り出して形を整える下処理が必要なのだ。鳴き声を楽しむ昆虫なのだ。
キリギリスを飼って餌を与えると、12月ごろまで生きてくれるが、体の色は褪せて動きも鈍くなる。昆虫は、成虫になると相手を見つけ、交尾、そしてメスは産卵する。その役目を終えると死んでしまう。私たちは、長生きしたらいいと思いがちなのだが、生き方が違い過ぎる。だからと言って、理解できないことではない。毎年、同じ場所に羽化して鳴き声が聞こえるのは、産卵した卵が寒い冬を越えることができ、幼虫そして成虫に育つ場所があるからなのだ。
虫によっては、害虫、益虫とグループ分けして見てしまうが、誰かが、うるさいと思う人もいるかもしれない。以前、クツワムシの声がうるさいと苦情が出たことを聞いたことがある。今では、そんな声も聞くことができなくなってしまった。

